Letters vol.1|A→B|件名:お久しぶりです

Bちゃんへ

手紙を書くのは何年ぶりだろう。
いや、メールの時点で、手紙じゃないのかな笑 便箋に万年筆だったらもっと情緒があったのかもしれないけど、実家にはないので、とりあえずパソコンに向かってます。でもなんか、メールってだけで十分アナログなのかもしれない。だって今は、DMでやりとりでしょ? でも、インスタにメッセージするのはなんか違う気がして(そもそもやってるのかも分からないけど笑)。Bちゃんには、きちんと“手紙”を書きたかったんだ。
私、寂しいのかな笑

こっちは海が近いから、平日の夕方、涼しくなった頃たまーに行くんだけど、夏だし、今は“凪”だね。サーファーもそんなにいなくって、観光客が数組、SUPでぷかぷか浮いてるくらい。砂浜に座ってると、まわりの音が何にも聞こえなくなって、心が落ち着く。無になれる。私、最近地元に帰ってきたんだけど、ちょっと前まで満員電車に揺られてたことが嘘みたい。まあ、そこまで嫌ってわけじゃなかったけど、今だったら、空いてる車両を選ぶかも。

今ってこの海みたいな、“凪”を好む人が多いよね。主観を押し付けず、波風を立てないように生きる人。もちろんその気持ちも分かるけど、最近は度が過ぎて、“無関心”な人も多い気がする。都会だけじゃない、田舎も同じだよ。一ヶ月でもそう感じる時があるんだから。できるなら平和に生きていきたいけれど、無関心にはなりたくない。これって矛盾してるのかな。

今はただ、この穏やかな水面をずっと眺めていたい気もするし、ちょっとだけ波のある場所に行きたい気もする。紙と鉛筆だけ持って、波をドローイングしたい気分。そうして過ごす一日も、いいもんかもなって思ってる。

こっちの花火大会はね、小規模なものが多いから、「ドーン、……ドーン」って間があって、一つ一つがよく響く。夜、遠くで花火の音が聞こえると、帰ってきたんだなって実感する。なんかその音を聞いてたら、ふとBちゃんを思い出して、手紙を書きたくなったんだ。花火と花火のこの“凪”が、なんだかとっても心地いい。

十数年ぶりのメールだけど、ちゃんと届いてるかな笑。届いてて、もし私のこと覚えてたら、返信ください。気長に待ってます。

2024年8月1日
Aより

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AとBに託して綴る、“私”と“私”の“今”を込めた往復書簡。
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