MOON vol.3 / 長短 / #2E394D

− 長短 −

Contents

◆ つるべ落とし/KAWAGUCHI Yuko
◆ 「長短」/HIRAI Yuta
◆ 長さを測る/MIYAKITA Hiromi


つるべ落とし


あっという間に暮れる日に、秋を感じる。
今夜は何を食べようかな……。
そんなことを考えていると、もう、あたりは真っ暗だ。

グラフィック&Webデザイナーの私は、ついつい、自然の中にある「色」を探す。とりわけ、夕空のグラデーションは魅力的だ。春夏秋冬、すべての配色を目の網膜に焼き付けて、カラーパレットに残したい。

「つるべ落とし」といわれる秋は、その瞬間が本当に短い。気がつくと、ベストなタイミングを見逃してしまう。

でも、その分夜が長く感じる。
晩御飯を食べた後は、スマホ片手に、物思いにふける。日々のタスクを眺めながら、頭の中を整理する。気分が冴えない夜は、独り煩悶する。

でも、自分と向き合える、そんな時間が好きだ。


KAWAGUCHI Yuko


「長短」


いよいよ最後を迎えるとき、
何を思うだろう。

一瞬だったな。
きっと、そう思う。
実際は長かった日々も、
振り返ってみたらそんなもんだろう。

今だってそう思うし、
過ぎ去った時間は、
忘れられることで編集されていく。

事情それぞれ、
大変なあれやこれを乗り越えて、
なんとか生きて、死んでいく。
それだけで、本当にすごいことだ。

何を遺したか。遺せたか。
それは決して大きなことではなく、
例えば、誰かに接したときの言葉や態度。
自分が発したそれが、
自分とその周りの世界をつくる。
それを受け取る家族や友達、
その他の人達にどんな影響を及ぼすか。
その小さな一手が、一言が、
実は未来につながっている。
色んな人につながっている。
自分が何を遺したかって、
そういうことで決まっていくと思う。

一瞬の人生、どんなバイブスを出力しようか。
幸せは、自分の中からしかやってこない。


HIRAI Yuta(CRAB WORKS)
https://crabworks.jp


長さを測る


去年の春から夏にかけて滞在先のオーストリアやフランスでホームセンター巡りをして、メジャーを買い込んでしまいました。メジャーを引っ張ったら裏に絵が描いてあって、それを見るためにメジャーを引き出す動作を「ダンス」と呼んだら面白いと夢中になってしまったからです。メジャーの裏に可愛いイラストを描いてあって、それを発見してもらったら楽しいなと想像をしていました。

ヨーロッパを旅するなかで、不真面目とは言いませんが、私は少しシニカルになってしまい、最後に過ごしたデンマークのMoen島に辿りついた頃には、引っ張れば引っ張るほど首がのびるとか、そういうものしか思い浮かばなくなってしまったのでした。

MIYAKITA Hiromi
https://miyakitahiromi.com


編集後記


朝起きて、世界が変わってしまっていたら……
そんなフィクションのような話が、最近、フィクションではなくなっている気がする。そんなことありえないでしょ、ドラマの世界の話でしょ、なんてことが、実際に起こってしまう世の中。私たちの常識は崩壊している。

気がつくと、この年齢まで生きてきた。
長かったような短かったような…… 繰り返される日常の中で、どうでもいいと思うことは山程ある。でも、毎日を価値あるものにしていきたいと、必死にもがいているのも事実だ。

この世界を、長いと感じるか短いと感じるかは、自分次第だ。
でも、例えこの先何がおころうとも、それを日常として受け入れ、生きていく力が必要だ。

人間は強くない……。そのことを肌で感じる日々である。

2020.10.1 KAWAGUCHI Yuko

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